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2018/2/7

低用量オプジーボ治療の症例報告(10)

 今回の症例は、実は2016年7月15日記載の「免疫細胞療法+”低用量オプジーボ”」の症例報告(3)の61歳(現在62歳)胆管癌の女性のその後です。

 前回の報告では、初回オプジーボ単独40mgで既に腫瘍径が43mm→34mm、その後NKT+オプジーボ20mgで34mm→23mmと順調に縮小していました。
 しかしその後、厚労省から免疫細胞療法とオプジーボの併用に関する注意喚起が出たため、やむなく低用量オプジーボ20mg単独に切り替える。(未だに無視して併用治療を強行しているクリニックがありますが、大丈夫でしょうか?)
患者さんも渋々了解。

 幸い低用量オプジーボ20mg単独でも徐々に腫瘍は縮小し、併用治療も含めて計11回の治療が終わった時点での2017年7月のCT検査では「腫瘍影ははっきりしない」となる。

 以後、2〜3ヶ月に1回に治療間隔を開け、15回投与後の2018年1月26日のCT検査でやはり腫瘍を認めないとの結果を受けCRと判断。
 しかし、患者さんは再発が心配とのことで、相談の結果、副作用リスクのないNK細胞療法単独を時々行うことで合意。(CRなのに一応副作用のリスクあるオプジーボをダラダラ続けるわけにはいかない)

2018/1/15

低用量オプジーボ治療の症例報告(9)

83歳、女性。
住民健診で便潜血(+)を指摘され、平成29年6月14日に地域の基幹病院受診。
諸検査の結果、9月になりようやく左下葉の肺腺癌ステージ4と診断される。肝臓、右副腎、左腎臓、右下腹部皮下に転移ありと。
10月6日に正式に病名と病状を告知されるが、担当の先生の診療態度に不満を抱き、以後勝手に受診せず。(こうしたケースが少なくない)
その後、遠方の自費診療クリニックで超高濃度ビタミンC点滴を受けていた。
ご本人の最大の苦痛は肛門部の痛みであり、それは基幹病院担当医も自費診療クリニックの先生も「痔」という診断で外用剤が処方されていたが、
さらに別の肛門科に受診したところ、痔ではなく癌の転移だと。

ネットで色々調べて、12月11日に低用量オプジーボ治療の相談で当院に来院。
肛門部を拝見すると、まさしく肛門に鶏卵大の腫瘤あり。こんな巨大な外痔核(イボ痔)があるわけない。
(肛門科以前の先生たちは、これを見てもいないのだろう。いくら忙しくても、それはダメでしょ。あまり診たくない場所ではあるが。)
胸部レントゲン上、確かに左下葉に陰影あり、腹部超音波で肝転移も確認できた。

早速、オプジーボ投与開始。
3回投与後、4回目の投与のために本日(平成30年1月15日)来院。
胸部の陰影は縮小しているものの、未だ30%以上の縮小には達していない。
しかし、肛門部の鶏卵大腫瘤が跡形もなく無くなっていた!
確かに前回までは肛門部の痛みのためベッドで仰向けになれなかったのに、今日は仰向けに寝ている。
腫瘍マーカーも順調に低下しているので、明らかに効いている。


※やはりオプジーボは肺癌にはよく効くようです。
当院でこれまでに治療を受けられた肺癌患者さんの成績は、腺癌8名のうちCR(完全奏効)2名・PR(部分奏効)3名・SD(安定、つまり不変)1名・PD(悪化)2名、扁平上皮癌の1名もPR。
実に肺癌9名中66.7%の6名がCR+PRです。
そして、PRの患者さんのほとんどは引き続き治療を受け着実にCRに向かっています。
しかし、腺癌PRのうち1名は途中で免疫暴走(肝機能障害)が起きたため治療中止になり、現在は標準治療で分子標的薬による治療を受けています。
そうした残念なケースもあります。

2017/12/28

低用量オプジーボ治療の症例報告(8)

 最近、低用量オプジーボ治療をご希望される患者さんは状態が悪い例がほとんどで、そのためもあってかなかなか著効例がなかったのですが、久々にPR(30%以上の腫瘍縮小)の症例がありました。

 75歳、男性。平成28年6月に黄疸が出現し、精査の結果、十二指腸乳頭部癌ステージ2と診断される。8月に手術し例によって「全部取れた」と。後療法で抗がん剤治療開始したが、副作用強く中断。以後、外来で経過観察されていた。
 ところが、平成29年8月に多発肺転移が見つかる。別の抗がん剤治療開始し、2クール終わったところでPD(悪化)と判断され余命1年と宣告される。(早いな!) その後も抗がん剤治療を続けていたが、やはり副作用が辛いとのことで患者さんが継続拒否。

 当院に相談にみえ、胸部レントゲン上、確かに両肺に複数個の転移巣を認める。相談の上、11月15日より低用量オプジーボ治療開始。3回終わって2週間後の12月28日の胸部レントゲン写真で各転移巣はそれぞれ30%以上縮小しているし、腫瘍の陰影の濃度そのものが薄くなっている。腫瘍マーカーのCA19-9も140から72と半分に下がっている。免疫暴走の副作用も今のところ無いようだ。(抗がん剤の副作用の味覚障害は続いている)
このままCR(完治)まで一気に行くことを期待しています。どうか免疫暴走だけは起きませんように。

2017/9/13

オプジーボ20mg投与の経緯について(3)

 オプジーボ20mg単独にしてからも治療成果は大して変わっていない印象ですから、そもそも免疫細胞療法との併用自体が必要なかったのかも知れません。(抗がん剤治療などのために免疫力がよほど落ちているというケースは別ですが)
 ここでその治療成果についてですが、当院での未だ50名にも満たない症例数ではデータとしてあまり意味がありませんが、CR(一旦腫瘍が画像上消えた症例)12%、PR(腫瘍が30%以上縮小した症例)26%、SD(腫瘍は縮小していないが悪化もしていない症例)29%です。CRとPR合わせて38%。「取りあえず生命を落とさない」という最低目標としてSDまで含めれば、67%の患者さんが達成しているわけです。標準治療において「オプジーボは、言っても20%の人にしか効かない」という情報がありますが、それがCR+PRの%を指しているのなら、標準量の150mgとか200mg以上を投与してのその余りにも低い数字に驚きます。CRしかカウントしていないのでしょうか?それとも、たまたま当院にオプジーボが少量でもよく効く患者さんが集まったのでしょうか?
因みに、当院での副作用についてですが、放置すれば生命に関わるレベルの副作用は3件(7%強)発生し、1件は当院で治療し2件は病院が対応してくれました。少量だからと言って、決して副作用の発生率が低くなっているわけでもないようです。

 ここまで説明した経緯のように偶然にもオプジーボ20mg投与だけで効いた患者さんが少なくなかったので、今さら何の根拠もなく量を上げられないのです。20mgがベストなどとも思っていません。ただ、量を増やしても効果が変わらなかったり、場合によっては逆効果になったりしたらどうしようとも考えます。標準量の「言っても20%にしか効かない」という情報を聞けば、なおさらです。(ただ、さすがに体重が80kgとか90kgの患者さんには30mgとか40mgの投与を勧めていますが)

2017/9/11

オプジーボ20mg投与の経緯について(2)

 当初よりオプジーボの薬価の高さ(20mg当たり15万円強)も話題になり、「いい気になって使用していると我が国の保険財政が破綻する」というようなオプジーボに対してのネガティブ意見も少なくなかったのですが、そうした世の流れの中で平成28年7月中旬頃に「免疫細胞療法とオプジーボの併用で副作用による死亡者が出た」という報道が為されたのを契機に本格的にオプジーボのネガティブ・キャンペーンが始まりました。
 そもそもその事件は、標準治療の病院でオプジーボ標準量が投与された患者さんに別の民間クリニックが免疫細胞療法をしてしまい免疫暴走が起きてしまったというのが真相のようで、それは最もやってはいけないことなのです。ですから20mgという少量にしているわけです。しかし、報道ではそこまで詳細に報じていませんので、一般の人は「免疫細胞療法+オプジーボ=危険」という図式にしか捉えません。オプジーボに対するイメージも悪くなります。
 厚労省からも免疫細胞療法を行っている各医療機関に注意喚起が為されました。更にはオプジーボを名指しして医薬品輸入代行業者には「国内に代替品がある医薬品の個人輸入は原則認められない」という旨の通達もありました。(小野薬品製造のオプジーボは販売先医療機関を厳に制限していますので、それ以外の医療機関は米国ブリストルマイヤーズ・スクイブ社製のオプジーボを海外から個人輸入しています)
 当院で治療を受けていた患者さんの半数くらいも上記報道により動揺し、せっかく治療が効いているのに辞めてしまったという患者さんも出ました。そこで、厚労省からの注意喚起もあったことから少量のオプジーボのみの治療に切り替えました。なぜなら、たまたまですがその事件の少し前から、実は少量オプジーボ単独でも行けるのではないかという考えもあったのです。

 あまりに悪い全身状態でこの治療に賭けたいと来院する患者さんもいます。それらの患者さんの中には免疫細胞の培養が完成する2週間後まで無事でいるだろうか?と心配になるような状態の患者さんもいました。そこで「何もしないよりは」と患者さんご納得の上で少量のオプジーボのみ先に投与しておくという事例がありました。すると、そのうちの何人かは無事に2週間後に免疫細胞治療のために来院した際に、既に癌が縮小している現象が見られたのです。たった1回のオプジーボ20mgの投与で、です。

(続く)


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